当資料では今後の流通業態と流通DXについての仮説を記載しています。

この資料では、流通DXの一定の方向において先端を走ろうとしているamazonの現状と今後の動きを引用しつつ、今後流通業態に起こる流通DXにおける変化を具体的に記述していきます。

Ⅰ.はじめに

流通業態(流通DX)で起こっているもっとも基本的な現象は、地上店舗販売からオンライン販売へのシフトと言えます。

つまり、ネット販売という新たなディスカウント業態に既存の地上の小売業が侵食されている現象です。日本では書店がなくなる程度にしか、身近には感じられない方もおられますが、米国では、モールや店舗がどんどん閉鎖され、身近に感じられている現象です。

それも、単なるネット販売をするということではなく、同様の商品であれば、競合よりもより安い値段で販売できる構造を持つネット販売者にシフトするということになります。商品がamazonと重なっていればライバルはamazonも含まれます。

そして、ネット事業者からの参入があるだけでなく、これまでの地上の小売業者自身が店舗数を減少させ、ネット販売に注力するようになります。

もちろん、ネットで販売しにくい商品(例えば飲食や生鮮食品)やサービスを扱う店舗は生き残ります。しかし、既存の業態の地上店舗は減少させ、その売場をネット上にシフトさせていきます。そのシフトができない企業はその規模を縮小させていくというのが流通DXの大きな構図となります。

Ⅱ.流通業態の変遷の要素

ここ半世紀における大規模な流通業態の変遷を整理すると、主に以下の3つの要素の競争から起こってきました。この方向はこれまでも、これからも変わらないと考えますので、ここで一旦整理しておきます。

  • より安価で提供(同一品質において)
    業態変遷例)個人商店⇒スーパーマーケット⇒ドラッグストア⇒amazonなど⇒100円ショップ
    ※ハイタッチ(対面)よりも面倒なセルフでもより低価格で販売する業態が受け入れられました。
    ※この低価格を実現するために、流通業態だけでなく、自ら企画や製造を持ち製販一体型となった企業も出てきました(ユニクロや100円ショップDAISOなど)。
  • より多くの種類から選べる
    業態変遷例)個人商店⇒百貨店⇒専門量販店⇒amazonなど
  • より簡単に手に入る
    例)スーパーマーケット(遠い/広すぎる)⇒コンビニ⇒amazonなど

以上の3つです。

Ⅲ.amazonに見られる流通DXの整理

既存の地上小売業の売上を奪い取りつつある新流通業態であるamazonの行動の中には、今後の流通DXに取り込まれるポイントがいくつかあるため、以下に整理しておきます。

1.中間物流段階の中抜きによるス-パーディスカウント販売

わかりやすく言うと、地上卸と地上小売を中抜きすることによるコストダウンです。

その構造は以下のようになります。

  • 従来の小売の物流の流れ(例)
    メーカー⇒メーカー地域別商品倉庫⇒卸倉庫⇒小売商品倉庫⇒店舗⇒消費者
    とメーカーから消費者まで約5段階あり、それぞれの段階ごとに、倉庫コスト、運送コスト、店舗コスト、が商品の原価に上乗せされる構造です。
    ※消費者は店頭に来るため店舗から消費者へのコストはかかりません。
  • amazonの物流の流れ(例)
    メーカー⇒amazon倉庫⇒消費者
    とメーカーから消費者まで2段階です。

上記の2つの例は、状況によって実際にかかる段階数やコストは異なるものの、商品の原価に上乗せされるコストは従来の小売の物流の流れよりもかなり小さくなっているのが現状です。

そのため、消費者が地上の店舗で「ネットでの価格まで値引きして欲しい」と、交渉しても、ネットの販売価格までディスカウントすると採算が合わない状況が生じています。

※以前、ラストワンマイルという言葉が流行ったことがありましたが、この問題は「ラストワンマイルの問題」という店舗と消費者間の問題ではなく、「トータル段階コストの問題」と表現した方が適切です。

2.スーパーリセーリングコストダウンオペレーション(造語)によるスーパーディスカウント販売

従来のスーパーマーケットに代表されるディスカウント小売業態は、

・メーカーや卸からの大量購入によるバイイングパワーで値引き仕入
・商品配送センタを持つことで、メーカーや卸の配送コストを減少させ、その分の支払い料金を引き下げ
・店舗の棚の有利な陳列位置と陳列量を販売することで棚置き料を徴収
・共同キャンペーンという名目で協賛金を獲得

といった様々な方式で商品のディスカウント原資を獲得してきました。

しかし、amazonはこういった従来の地上小売の方法とは異なるディスカウントを仕掛けてきました。それは、自社の経営資源を再販売する(自社の余ったシステム(AWS)、設備、人員を再販売する)ことによって、その再販売で利益を上げ、この利益を小売業態側の営業経費に充てるというものです。

つまり、極端に言えば、amazonは小売マージンがゼロでも、成立できるような構造をもって小売業態に参入してきたわけです。amazonは小売業としての利益は現在、メーカー、商社、卸、一部の小売が参加するマーケットプレイスの利用料ですが、このモデルを理解していても、他社が真似できない参入障壁はAWSの利益によって成り立っているためです。

ただ、こういった、自社の経営資源の再販によるコストダウンの考え方は今後、あらゆる業界に広がっていくことになります。

つまり、自社が開発した本来自社用のシステムや資産(トラックや倉庫など)を他社にクラウドを通して再販することで経費を削減/利益を獲得し、それを活用して本業の価格競争力を高めるという動きです。

3.無人化/自動化によるディスカウント販売

倉庫のロボットを活用した自動化の仕組みはあまりにも有名ですので説明は割愛しますが、すでに、地上の店舗でも自動化によるディスカウント販売体制の構築競争が始まっています。レジのセルフレジによる省人化やレストランの注文聞きの省人化は、まだ、ほんの一部でしかなく、納品や品出しを含めた店舗全愛の無人化、極端に表現すれば、「店舗の自動販売機化」を検討している企業が出てきています。

特に、コンビニエンスフランチャイズ業態では、コンビニオーナーの収入が苦しい中、コンビニのフランチャイズ本部対応としても、コインパーキングのように土地だけ提供してもらい、店舗のオペレーションはすべて外部が代行するというタイプの店舗の自販機化がコスト的にも現実的に考えられつつあります。

もちろん、オンライン販売にシフトした場合、販売者側の商品登録から商品預かり、発送、返品、返金まで自動化されます。また、消費者側の注文から質問対応、受け取り、返品、レビュー記入までの、いわゆる事務的な処理も無人化、自動化されます。

Ⅳ.amazonが地上小売業態に勝っていること、劣っていることの整理

上記のディスカウント力によって、消費者にとっては、他よりも安く購入できるという点を除いても、amazonは既存の地上小売業態に勝っている点があります。ただし、すべてにおいて勝っているわけではもちろんありません。それらを以下に整理しておきます。

1.amazonが地上小売業態に勝っている点

①多くの商品から選ぶことができる
②商品毎の説明を詳しく知ることができる
③購入し、使用した人からのレビューを知ることができる(一部、サクラは問題化)
④購入を検討している商品を検討した他の人が、閲覧し、比較検討した商品、さらには検討の結果購入した商品を知ることができる
⑤過去に自分の購入した商品が記録されているので再注文が容易

2.amazonが地上小売業態に劣っている点

①今、欲しい物が手に入らない

ただし、amazonでは数時間後の配達を試行中

②実物を直接見たり、触れたりはできない

ただし、現在でも、amazonでは、気に入らなければコンビニから簡単に返品可であり、将来は靴のオンライン通販ロコンドが実施しているように、商品によっては、複数の商品を一旦送付し、受け取った後に不要なものだけ返送というメニューが登場することになります。

③商品について専門家にその場で質問し、説明を受けることができない(対面説明がない)

といったことです。

Ⅴ.今後のamazonが展開しようとしている主な流通DXの整理

amazonを例に、今後流通DXで展開されていくと想定される主なことを以下に整理します。

1.顧客情報の利活用における「脱推定マーケティング」から「言わせるマーケティング」へ

※世の中で誤解されがちなのが、顧客情報の利活用です。amazonでは顧客情報を収集して活用しているのは、上の「amazonが地上小売業態に勝っている点」の③④⑤でしかありません。

③購入し、使用した人からのレビューを知ることができる(一部、サクラは問題化)
④購入を検討している商品を検討した他の人が、閲覧し、比較検討した商品、さらには検討の結果購入した商品を知ることができる
⑤過去に自分の購入した商品が記録されているので再注文が容易

多くの誤解は、顧客情報を収集すれば、その顧客が次に欲しいものを予測でき、その人に適切な商品をインタラクティブに提案すれば、新しい購買が生まれるのではないかということです。しかし、それは一部の商品を除いて現実的ではありません。

たとえば、ある人の家に訪問させてもらい、これまで購入した商品をすべて見せてもらえたとしても、次に購入したものを推定することがほぼ不可能です。それができたとしても顧客情報を収集するコストをカバーするほどの利益増加がないこともわかってきています。amazonで購入をされている方はすでに気づいていることですが、顧客の情報をあれほど集めているamazonでさえ、amazonのシステムから、これが実は買いたかったというような提案を消費者は受けていない現実が、まさにその証明でもあります。

なお、私は以前その点についてamazonのリコメンデーションシステムを再販している担当者に尋ねました。その答えは、「購入歴では、新しい商品を提案してもヒットする確率が低い」というものでした。

一言で言うと、「過去の買い物データを元に、次に買う商品の推定」することは採算が合わないということになります。買物歴を詳細に集めても、多くはライフステージデータ(生年月日、性別、家族構成、職業など)で代替できることがわかっています。

amazonでは、このことを当初から理解し、顧客情報の利活用においては、「脱推定」ということを目指してきています。

それは如何に、欲しいモノ、コトを消費者自ら売り手側に言わせるかという「言わせるマーケティング(造語)」への注力です。

その下地作りの一つが、Echo Flex(音声のみ) ~Echo Show(ディスプレー付)というスマートスピーカーの投入です。この装置は最終的には、消費者が家にいる時に、買物の相談する相手になるポジションを独占することを狙っています。

例えば、こういう会話をさせようとしています。

消費者「車中泊を考えているのだけど、何を用意すればいいのかな?」
Echo「車中泊をするのは、寒いときですか?暑いときですか?」
消費者「真冬にスキー場で車中泊をして、スノボーをしたいのですよ」
Echo「車中泊には、寝袋と電気毛布を皆さんつかっているようですよ」
消費者「寝袋は冬用を持っているけど、電気毛布はないね。どんな電気毛布が必要なの?」
Echo「電気毛布は家庭で使う電気毛布でいいです。ただし、ポータブル電源を皆さん使われているようです」
消費者「ポータブル電源って何なの?」
Echo「100Vの家庭用コンセントが刺せる大容量のバッテリーです。電気毛布で10時間暗い連続して使うには、350Whという容量以上のものがよく使われているようです。また、正弦波タイプのものが必要です」
消費者「それってどれくらいの値段のものなの」
Echo「amazonランキングで人気のある商品をEcho Show画面に表示しますと、Jackery ポータブル電源 400 大容量110000mAh/400Whがamazonでは現在44800円、JVCケンウッド ポータブル電源 スタンダードモデルタイプ 容量518Whが60280円などです」
消費者「わかった。その2つの違いは何?」
Echo「ワット数意外の違いは、それほどありません」
消費者「amazonのレビューの評価はどうなの」
Echo「両方とも、信頼してよい評価です。車中泊の要件を満たす商品のページをあなたに送っておきますね」
消費者「いや、今度の土曜日に車中泊に行ってみたいから、安い方を注文したいけど、いつ届く?」
Echo「明日中に届きます。注文しますか?」
消費者「注文してください」・・・・・・

このようなやり取りを通して、Echoは相談から購入の意思決定までを他のショップに行く前に完結させようとするものです。これが「言わせるマーケティング」です。

注意すべきは、このやり取りがこれまでの商品説明やレビューから自動的に生成できるほど、現在のAIは賢くありません。したがって、特にメーカーや商品開発側の人間が、この会話を成り立たせるようなFAQをamazon側に登録するようになります。そしてその問答を如何に適切に作成できるかの競争になります。いわゆるFAQのSEO競争になると考えられます。セレクトショップや専門店でも取扱商品によっては、このFAQを適切に構築をすることが、競争上迫られる場合が生じてきます。

この問答は最初から音声でのやり取りではなく、はじめは、チャットボットでのFAQ集として用意されます。

当然、従来の広告費用のいくらかが、今後、このFAQ構築に割かれていくことが想定されます。

2.オンライン対面販売の機能追加

上記「amazonが地上小売業態に劣っている点」の中で「③商品について専門家にその場で質問し、説明を受けることができない(対面説明がない)」と記載しました。

今後、amazonはこの点にも対応しようとしてくることは当然です。
やり方としては、現在の商品説明ページに「チャットボットボタン」が導入され、質問を入力すれば、上記のFAQの回答が表示されますが、それでもわからない時は、チャットボットで担当者に尋ねることができるという機能が追加されます。

この仕組では、その商品に専門的に回答できる遠隔地にいる専門家が、amazonより通知を受けて、それに答えることができるものになります。大手のメーカーは自社にその専任者をコールセンタ型で配置しますし、小規模メーカーでは、兼任者が、通知を受けた時だけスマホから回答するようになります。あるいは、日本語が流暢ではない中国などの販売者や、対応者にコストを割きたくないメーカーでは、その役割を果たす専門家を外部委託するようになります。そして、それに対応できない販売者にはチャットボタンが表示されず、選択肢の中から消えていくことになります。

あるいは、店舗でもその対応を他店舗との競争上求められるようになることが想定されます。特に説明要商品を扱う流通業態でそういった対応が求められると考えられます。たとえば、大規模専門店チェーン(ホームセンター、家電量販店、ファッション店、ドラッグストアなど)では、コスト的なメリットと対応品質の競争強化のため、一箇所に商品に詳しい専門家を集めたコールセンタ体制型で対応することになると推定されます。小規模チェーン店舗などでは、店員が店頭対応と兼任しながらビデオ会話で問い合わせに対して、対応します。なお、これによって、商品を来店ではなく、直接消費者宅に配送するという流れも増やさざるを得なくなってきます。

 

Ⅵ.今後の流通業態(流通DX)で起こること1(確実)

これまで記載したことを一旦整理すると以下のことになります。

※上記での説明と重複するため、ここではタイトルだけ書き出し、説明は省略します。

1.リアル店舗販売からオンライン販売へのシフト

2.中間物流段階の中抜きによるス-パーディスカウント化販売

3.スーパーリセーリングコストダウンオペレーション(造語)によるスーパーディスカウント販売

4.無人化/自動化によるディスカウント

5.購入し、使用した人からのレビューを知ることができる仕組みの導入

6.購入を検討している商品を検討した他の人が、比較するために閲覧した商品や結果購入した商品を知ることができる仕組みの導入

7.過去に自分の購入した商品が記録されているので再注文が容易にできる仕組みの導入

8.顧客情報の利活用における「脱推定マーケティング」から「言わせるマーケティング」へ

9.オンライン対面販売の機能追加

Ⅶ.今後の流通業態(流通DX)で起こること2(推定)

上記以外で発生する流通DXの要素は以下のようになります(推定)

1.メーカーや店舗によるネット広告へのさらなるシフト

売り手は、紙媒体(新聞、雑誌、チラシ)の減少や、TV視聴時間の減少などにより、ネット広告にシフトしていかざるを得ない状況になっていきます。

さらに、地上小売店舗が減少し、ネット販売にシフトしていくため、ターゲットは地域ではなく全国が対象となります。

2.自社アプリの作成と会員化

上記のネット広告は、視聴やクリックごとに課金され、広告主が増えれば、クリック単価が上昇するため、次第に、採算が取れない状況となってきています。そのため、広告を無料で打てるようにするため、自社アプリを作成し、自社アプリへの会員化を進めています。

一度、会員化してしまえば、そのアプリがアンインストールされるまでは、無料でプッシュ広告を打つことができます。

そのため、自社アプリへの会員化のためには、ある程度経費をかけてもよいと考え、そのために、ネット広告(Googleリスティング広告、Facebook広告、LINE友達申請、アフィリエイト広告など、高額の広告に投資をして会員を集めようとします。これまでも当初はLINE友達で広告を配信していた企業が自社アプリにシフトしてきています。

3.自社コンテンツによる広告、ファン化

少し前までは、メール、次にブログ、少し前はFacebook、そして今は、YOUTUBEといったように、コンテンツの媒体は次々に変化してきますが、その媒体において人気コンテンツを提供することで、会員化(フォロアー、チャンネル登録など、コンテンツが更新された時に通知されるようになること)を図ってきました。ユニクロはFACEBOOKではフォロアー110万人となっています。

今後は、特に動画コンテンツで人気チャンネルを作り上げ、大きな広告塔をつくる競争が起こると推定されます。

それは、YOUTUBEで言えば、チャンネル登録者数50万人といったレベルを目指す競争になります。

特に、カテゴリ毎のチャネルは1~3チャネル生き残りの競争になると推定されます。例えば、DIYチャネルをヒットさせようとした時、それを仕掛けるのは、おそらく自社商品を抱えるメーカーでは難しいと考えます。おそらく、それは消費者側のスタンスに立てる事業者であり、小売業の可能性が大いにあります。

4.リアルタウンのデジタル可視化

内容省略

以上